水のようにしなやかな生き方「上善は水の如し」

今年の夏も猛暑で、暑い日が続いています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑い夏の日には、水の涼しさが肌に心地いいですよね。

水を飲んだり、浴びたり、海辺などで眺めたりしていると、

私は老子の名言「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」を思い出します。

 

中国春秋時代の哲学者・老子は、物事の一面のみに固執せず、

二面性を受け入れてその両面を大切に、

バランスの取れた生き方をすることが大事である。

 

つまり「状況に応じて柔軟に対処しましょう」

という「水」のように生きることの重要性を教えました。

 

老子の哲学はよく「水の理論」と言われます。

それは「上善如水」(『老子』)の説明として、次のように語られています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高の善は水のようなものである。万物に利益をあたえながらも、他と争わず器に従って形を変え、自らは低い位置に身を置く」

 

このような水の性質を、最高の善のたとえとしています。

さらに続く部分に次のように書かれています。

 

「水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所に処る、故に道に畿(ちか)し」

 

水は大地に恵みを与え、ありとあらゆる生命を育み、

人々の喉を潤し、作物を育てるなど、さまざまな利益(利他)を私たちに与えてくれる。

 

こうした水の性質として、まず「柔軟」であることが挙げられます。

それは次のように表現されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川を流れる水は岩にぶつかるとしなやかに方向を変える。

湯のみ茶碗のなかの水はまるい形をしており、

升(ます)のなかの水は四角い形をしている。

 

さらに、山に降った雨は下へと流れて一筋の川となり、

川はさらに低い方へ向かい海に出る。

そして、陸地にとどまっている水は低い所に落ち着く。

 

……鹿児島県にある霧島市横川町の膨大な水量を誇る湧水スポット

「大出水の湧水」を思い出しました。

 

また、老子は水のもつ力を次のようにも説いています。

 

「天下に水より柔弱なるはなし。しかも堅強を攻むる者、これによく勝るなきは、

その以て之を易うる無きを以てなり。弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下、知らざるなくして、よく行うなし」

 

老子は「争わず低いところに留まる」生き方こそ

堅く強いものに打ち勝つことができる秘訣と考えました。

 

水は「方円に従う」という言葉の通り、器に合わせて姿を変えるしなやかさがあります。

しかし、同時に重くて固いものを動かす力を持っています。

 

打っても破れず、刺しても傷つかず、切っても断たれず、燃やしても燃えない存在。

 

弱いものが強いものに勝ち、やわらかいものが堅いものに勝つ。

まさに「柔よく剛を制す」ですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また老子は、

「“天下の谿(けい)”になるような(栄光を知りながら謙虚で、全てを受け入れる)立場を守れる人なら、

聖人として不変の“徳”が備わり、赤ん坊の状態に戻れるだろう」と説いています。 

※『老子道徳教・第28章』

 

つまり、老子は「赤ん坊=最強の存在」と考えていたということです。

実はこの発想は、ニーチェの思想にも繋がっており、

西洋哲学でも似た考え方が生かされています。

 

赤ん坊は、一見、何もできない、何も手にしていない存在です。

ミルクを与えられなければ生きていけないし、

自分一人ではトイレに行くことすらできません。

 

しかし、あの小さな体には、

多くの人を惹きつける強いパワー「可能性」を秘めています。

 

本人が何も言わなくても、周りの大人たちは赤ん坊に尽くしますが、

それでいて、赤ん坊に「使われている」とは思いません。

 

ありのまま純粋に愛を振りまき、

何もせずとも大人たちに尽くされ、守られ

最もか弱い存在でありながら、

実は最強の存在「無為自然(TAO)」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この素直な姿こそが「助けられているようで、実は助けている(逆も然り)」

老子の唱えた理想の関係性の在り方だと言えます。

 

己を知り、己の弱さや愚かさを全て受け入れた上でありのまま生きる

それができれば、人生はもっとラクに、楽しく生きられるのかもしれません。

#上善如水 #老子 #鹿児島

 

(和田直也)

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